先日、マインツに滞在していたところ一本の電話が。 「急遽コントラバス奏者が出られくなり、代理の奏者を探しています。モダン音楽のオケなのですが、本番は東京で…」聞いてみると、リハーサルはもう始まっているとのこと。リハ場所はフランクフルト。マインツからは電車(Sバーン)で1時間ほどだ。「では今から行きます」ということで、リハーサル2日目の途中から参加。ちなみにこういうのをドイツ語ではeinsprinenという。僕はEinspringerだ。 ところが、譜面を見てびっくり。Brian Ferneyhough(ファーニホウ)という英国の作曲家で、極めて難易度の高い楽譜を書くことで有名な人だった。 とにかく普通の音がない。微分音も多い。しかもコントラバスは一人。初日は、今やっているのはここら辺で・・・というのを目で追うだけで精一杯。それから本番までの日々、いつも鞄に楽譜を入れ隙間時間を見ては練習するのだが、とてもじゃないが間に合わない。 そのことを師匠に相談したところ「楽譜をカメラのように見て、細かい部分に気を取られ過ぎないように」というアドバイスをもらった。実際その通りで、大局的に譜面を眺めて大事な部分を直感的に拾っていく。そうすると音楽が見えてきた。 結局、かつて経験したことがないほどの不安を抱えながら本番を迎えてしまった。コンサート自体は大成功で、お客さんも大喜び。現代音楽の演奏会にもかかわらず、オペラシティ大ホールの9割は埋まっていた。 しかし僕は晴れ舞台の中、もっとやれたはずだ・・・という思いが残ってしまった。 だが、ファーニホウの曲は面白い。 コントラバスの独奏曲もあるらしい。 アンサンブル・モデルンはフランクフルトを拠点に世界中で活躍する現代音楽専門のアンサンブル。団員は約20名で、アカデミーもある。ベルリン・フィルのSolo奏者のマシュー・マクドナルドも以前ここのメンバーだったらしい。 隣で色々と助けてくれたチェロ奏者のM氏と仲良くなったのだが、彼は以前はWDR(ケルン放送響)に在籍していたとのこと。共通の知人の話で盛り上がった。 とにかく、世界一の現代音楽オケに関われたことは、一つの誇りとなった。
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