オイドクサ(コントラバス弦)

オーケストラ・チューニングではオイドクサを使用してる。

オイドクサの魅力はやはり「音色」。
この弦を初めて弾いた時の衝撃は忘れられない。
3年くらい前にベルリンで、ベルリンフィルのメンバーによる講習会があり参加した。その時に人気製作者シュテファン・クラッテンマッハーが新作の5弦コントラバスを紹介がてら持ってきていた。その晩のベルリンフィルの演奏会で、ヤンネ・サクサラがその楽器をテストとして演奏することになっていたのだ。弦のセッティングは彼の好みになっていた。

それはG線はベルカント、D,A,E,H線はオイドクサである。

この楽器を少し弾かせてもらったのが衝撃体験だった。子どものころ初めてモルダウを聞いて、世の中にこんな音楽があるのか!と衝撃を受けたときに近い。もしくは初めて霜降り肉を食べたときの衝撃。

コントラバスの音の理想そのものだった。アルコの上質な音色と音量、そしてピチカートの残響の良く伸びること・・・。

それ以来G線はベルカント(若しくはフレクソコア・デラックス)、他はオイドクサにしている。

ちなみに世間で言われるオイドクサの欠点として

-チューニングが不安定
-切れやすい

がある。
チューニングに関しては、最初の1週間は確かに現場で使うには厳しい。30分で半音近く下がることもある。しかし2週間くらいすれば、少なくとも1時間で大きく狂うことは無い。リハーサルは通常60分で休憩が挟まるし、オペラでも90分に1回くらいは調弦できるので、十分だと思う。ちなみにG線のみスチール弦にする理由は、チューニングが狂ってきてもG線を頼りに直すことができるから、というのもある。

おすすめはセカンド楽器にしばらく張って、ある程度伸ばしておいてから仕事で使うことだ。十分に伸ばした後なら、他の楽器に張っても3日くらいで安定する。

切れやすい問題は、実は経験していない。2年くらい張っている楽器もあるが、まだ切れていない。が、いつ起こるかは分からないので、バックアップ用に伸ばし済のオイドクサとスチール弦をケースに入れておくようにはしている。

ちなみに初めて張る場合は、工房で駒の溝などが適切かどうかをチェックしてもらうと良いと思う。特に溝の幅もだが、溝の角度が鋭利だとそこに負荷が集中するので、なるべくなだらかにしてもらって、さらに鉛筆で滑りをよくすると良いと思う。

乾燥対策も、実は何もしていない。(笑)
ピラストロから弦オイル(Saiten Öl)が出ているので、それを塗布すると良いと思う。オリーブオイルを使う人もいる。

私は楽器を甘やかす?のが嫌いで、ダンピットも使っていない。弦も楽器もその季節に慣れてもらう、ということを重視しているので、オイルもあえて塗布していないのだ。
今のところこれでトラブルはない。ただ自宅では夏は除湿器(主にピアノの調律のため)と冬は加湿器(空気清浄機のもの)を使っている。

ちなみにダンピットは、楽器の内側の湿度と外側の湿度が大きく変わるので良くないという意見もある。もちろん楽器の健康状態にもよるとは思うのだが。

ソロ・チューニングのオイドクサは受注生産になっている。通常販売してくれないかなぁ。


コメント

Copied title and URL